現在製作中のチェロを使って弦楽器の作り方をおおまかに解説します。ヴァイオリンやヴィオラの場合も大きさ(つまり作業量)が違うでだけで基本的な作り方はほぼ同じです。

まず型枠を作ります。型枠はとても重要です。楽器が奏でる音の特徴を決めるからです。様々な形状を試して好みに合う楽器を作るといいのかもしれませんが、作業量が膨大になります。定評のあるオールド楽器の複製品を作ることにします。次の写真はStradivariusのDavidovというモデルをもとに作った型枠です。私の師匠から受け継いだものです。

Antonio Stradivari 1712 Davidov チェロ
Antonio Stradivari 1712 Davidov チェロ

型枠にブロックを木工ボンドで接着します。ブロックにはスプルースという松の仲間の木材を使います。表板もスプルースです。スプルースは比較的やわらかい木です。型枠は後ではずすので、ブロックの接着は弱めにしておきます。ですが弱すぎると作業中にはずれてしまうので、それなりの接着力は必要です。具体的には木工用のボンドで2~3点くらいで接着しておきます。

このブロックを成形して、横板をブロックに接着します。横板の接着はニカワで行います。ニカワは動物のタンパク質からできています。なので匂いを嗅ぐと少し臭いです。ニカワは硬化するとかなり強力です。簡単にははがれません。ですが、お湯をつけると簡単にはがれます。

横板にはメイプルという木を使います。メイプルは楓(かえで)の仲間です。メイプルは比較的かたい木です。私がいつも使っている横板用の木材は厚みが3 mmくらいあります。これを鉋(かんな)ややすりで削って1.5 mmの厚さにします。一様な厚さになったら、アイロンを使って型枠の形に合わせて横板を曲げます。最初はCバウツのところからです。写真では2枚のうちの片方が接着されていますね。その他の部分も同様に横板を曲げて接着します。